キューバ - アフロ・キューバ・ジャズを発見する
いよいよ、Oh!Jazzは、キューバでのライブ配信をスタートした。
その会場に選ばれたのは、ハバナにある「Fábrica de Arte Cubano」だ。かつては食用油工場だったこの場所は、2010年以降キューバを代表するミュージック&アートスポットとして現地の人々に浸透している。
2008年頃から、キューバのアーティストやミュージシャンのグループが、様々な形態のアートを展示するための場所を探し始め、閉鎖されていたこの工場を取得した。2014年2月にオープンし、以来地元の人々や海外からのミュージシャンや音楽ファンが集う場所となっている。
Oh!Jazz キューバ会場のこけら落としとなったのは、ニューヨーク/キューバ・コレクティヴの公演だ。国際的に活躍しているキューバ出身のピアニスト、作曲家、アレンジャー、デイラミール・ゴンサレス(Dayramir González)率いるこのグループは、ニューヨークとハバナ、2つの都市のスピリットを際立たせた音楽性で注目されている。さらに、このバンドが大きな目的として掲げているのが、ハバナの若い学生たちに向けての教育的なサポートだ。
このコレクティヴを構成しているのは、デイラミールの他に、ジェームス・ロビンソン(James Robbins)(b)、ティアゴ・ミシュラン(Tiago Michelin)(ds) 、二階堂 貴文(per) そして、チャド・レフコウィッツ・ブラウン(Chad Lefkowitz-Brown)(sax)と、アーロン・ゴールドバーグ(Aaron Goldberg)(p/key) で、ニューヨークでしのぎを削るメンバーが集まっている。彼らは、キューバでのギグだけでなく、ハバナのハイスクールで公開演奏を行い、国立芸術学校(ENA)や、ギレルモ・トーマス音楽学校(Guillermo Tomas Music School)でマスタークラスも開催している。ハーモニー、作曲、即興テクニック、音響デザイン、ビジネスやマナーなど、多岐にわたる内容のクラスを提供し、意欲的にプロを目指す学生に向けて、継続的な交流を続けている。
このコレクティヴには、日本出身のパーカッショニスト、二階堂貴文、通称TAKAが参加している。現地のデイラミールや、ハイレベルなソロをとるチャド、ベテランのアーロンに混じって、アフロキューバンジャズの核となるリズムを生み出しているTAKAの姿が、Oh!Jazzの公演でも見ることができる。
彼は、北海道札幌市出身、30歳の気鋭のパーカッショニストだ。高校卒業後、奨学生としてバークリー音楽大学に入学。2014年にキューバで開催された大会”FIESTA DEL TAMBOR 2014”にて最優秀外国人賞を受賞。その後キューバ現地で多くのミュージシャンに師事し、2020年から拠点をNYに移してからは、オフブロードウェイミュージカル”THE VISITOR”にパーカッショニスト/俳優としても抜擢されるなど、国際的な活躍を遂げている。
TAKAは、Oh!Jazzにラインナップされているピアニストの曽根 麻央(Mao Sone) や、トランペッターの類家心平(Shinpei Ruike)擁する井上銘(Mei Inoue)のリーダーバンドの作品にも参加しており、日本のジャズシーンを動かす重要なアーティストたちを、リズム面からサポートしている。彼らの世代のバークリー音大学内は、ラテンルーツのミュージシャンも過去に比べて多くなっているようで、日本から渡った学生たちも日々のコミュニケーションの中で自然にラテンジャズのスタイルを培っているケースも多いという。
そんな世界に広がるラテンの波動を感じ取れる、ニューヨーク/キューバ・コレクティヴのライブは必見だ。デイラミールが掌握するポジティブなバイブスと会場の熱気、ニューヨークのトップクラスのテクニックも惜しみなく披露される最高のステージを、目の前で堪能できるのだ。今後のキューバのラインナップで、世界がジャズで繋がっていることをさらに目の前で実感できるはずだ。