Hiroko's Selection: トニーニョ・フェハグッチ・クインテット

Toninho Ferragutti · Photo: Paulo Rapoport vía Facebook.

 ブラジルのアコーディオン奏者といえば、60年代から活躍するドミンギーニョス(Dominguinhos)と、次の世代のトップ・プレイヤーと呼ばれる、トニーニョ・フェハグッチ(Toninho Ferragutti)だろう。トニーニョ・フェハグッチは、現代音楽やジャズのフィーリングを持ったアコーディオン奏者で、作曲や編曲も手掛けるベテランミュージシャン。1959年生まれで、1983年にプロとしてキャリアをスタートし、これまでに10枚以上のリーダー作をリリース、最初のソロアルバム『Sanfonemas』(2000)はラテングラミー賞にもノミネートされている。サイドマンとしてもエルメート・パスコアール (Hermeto Pascoal)、ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)、エドゥ・ロボ(Edu Lobo)などのバンドに参加する他、サンパウロ州立交響楽団、ミナスジェライス交響楽団など数々のオーケストラにソリスタとして参加。そしてグラミー受賞者のマリア・シュナイダー(Maria Schneider)のジャズ・オーケストラの一員としても各所で演奏している。ブラジルの北東部をルーツとするダンス音楽(フォホー)の熟練者であると同時に、現代的なサウンドやジャズの世界にもっともフィットする演奏をしてくれるのがこのトニーニョなのだ。

いよいよ2023年3月からOh!Jazzでスタートしたサンパウロのジャズクラブ〈JazzB〉からの配信第一弾が、トニーニョ率いるクインテットのライブ。アコーディオンと、ギター、ソプラノサックス、ベース、ドラムでの構成で、約1時間15分のライブは、全く時間を感じさせないライブで大満足だった。

ワルツやサンバ・ジャズ、マルシャと呼ばれる歴史あるマーチのようなリズムも楽しく、ハーモニーも鮮やかなこのクインテットの演奏は、ブラジルの多彩な音楽性を表すものでもあるだろう。

トニーニョの親しみやすいアコーディオンの音色は、美しくも、力強くもなって、他の楽器に軽やかに溶け込んでいく。その様子がリアルに感じることができたし、私の居る日本の音楽シーンではなかなか見ることができないアコーディオンの演奏方法もたっぷりと観察することができた。中でも見所は、ソプラノサックスを担当するカッシオ・フェヘイラ(Cássio Ferreira)とトニーニョのインタープレイ。カッシオは、日本でも話題となっていた2016年リリースの現代ブラジリアンジャズの傑作、ロウレンソ・ヘベッチス(Lourenço Rebetez) の『O Corpo De Dentro』に参加していた注目の若手リード奏者だ。瑞々しいソプラノと、華麗な指使いで疾走するアコーディオンが有機的に絡み合った二人の対話は、ジャズの醍醐味をたっぷり味わえる奇跡的な瞬間だった。その他の曲も、アコーディオンはもちろん、ソプラノサックスやギターの即興演奏がたっぷりと組み込まれ、それぞれのソロを盛り立てるトニーニョのバッキングの多彩さにも耳を奪われた。

ワルツやサンバ・ジャズ、マルシャと呼ばれる歴史あるマーチのようなリズムも楽しく、ハーモニーも鮮やかなこのクインテットの演奏は、ブラジルの多彩な音楽性を表すものでもあるだろう。〈JazzB〉のフレンドリーな店内の雰囲気や、飾らない人々の対話も終始和ませてくれた。

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La selección de Hiroko: Toninho Ferragutti Quintet

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