Live Music - A New Way to Discover Jazz
自分自身の感性にフィットする音楽に出会えることは、とても刺激的だ。レーベル主体で作られたアルバムやラジオから流れるシングルを聞いてミュージシャンを知る時代から時が経ち、現在はこのOh!Jazzのように、世界のどこかで行われている演奏をインターネットを通じて体験し、ミュージシャンを探すこともできる。出来上がった曲を誰かから、またはどこからか聞いて知るのではなく、見ず知らずのミュージシャンの「ライブ」を自ら見つけに行くという、とても主体的な音楽の発見の仕方に、私は驚きと刺激を感じている。
ここで私が知ったJas Kayserのことを紹介したい。彼女はロンドンの606クラブに出演しているドラマーで、1995年生まれ。現在ロンドンとパナマ共和国でも活動している。ジャズ教育で名が知られているアメリカのバークリー音楽大学でTerri Lyne Carringtonに師事し、同校の修士号を取得。Ralph PetersonやLenny Kravitzらと共演している。最新EPは2022年4月にリリースされていたが、現代を代表するサックス奏者のNubya Garciaがメジャーデビュー前にリリースしたことでも知られるロンドンのレーベル、〈Jazz re:freshed 〉からの作品ということで、大いに期待を持った。またJasは、UKのミュージシャンを支援する女性組織、〈Women In Jazz〉が大プッシュしていたミュージシャンで、もともとこの組織の活動について調べていた私にとっても彼女の存在がリンクし、Oh!Jazzでのライブでその魅力をしっかりと確信することができた。
このバンドは、Joao Caetanoのパーカッション、Alex Blakeのギター、Christos Stylianidesのトランペット、Daisy Georgeのベースという構成のJasのリーダークインテットで、ドラムとベースは女性、パーカッションとギター、トランペットは男性で、リズム隊が完全にこのステージを掌握するステージは、ジェンダーバイアスを全く感じさせないものだった。大きなウッドベースを抱えたDaisy Georgeのファッションやタトゥーはとても現代的で、ジャズ最先端のヒップさを目の当たりにしたし、Alex Blakeのギターソロの音色選びもテクニックを感じさせるものだった。 IncognitoやChaka Khanのバンドで活躍するJoao Caetanoの高いクオリティの演奏を体感できたことも収穫だった。アップで映し出されたドラムセットや、ギターの指運びなど、客席からは見えないアングルでの光景も新鮮に感じられる。
イギリスのジャズのルーツでもあり、魅力の一つでもあるアフロビートを、Jasの独自のタイム感で取り入れ、派手さよりもサウンドの質感で勝負したステージから、20代が率いるリアルなジャズの息遣いを発見できたことに喜びを感じた。