Hiroko's Selection カイディ・アキンニビ

カイディ・アキンニビ(Kaidi Akinnibi) は、この数年のUKサウンドを彩る若手サックス奏者だ。トム・ミッシュ&ユセフ・デイズ(Tom Misch & Yussef Dayes)の2020年のヒット作にゲスト参加していたことで、彼の名前を知ったファンも多いだろう。ここ日本でも、昨年末の来日公演で知名度を上げたデュオ、Blue Lab Beats のメンバー、NK-OKとKaidiの共同名義でリリースされた『The Sounds Of Afrotronica』(2021)も、話題に上がっている。Kaidiは、このアルバムで、マヌ・ディバンゴ(Manu Dibango)の「Soul Makossa」のカバーなどを取り入れ、ジャズとアフロビートを融合した快活で現代的な音色を聴かせている。また一方でKaidiは、UKの新星ポストロック・バンド、black midiのレコーディングにも参加しており、現在のUK最先端の音楽に欠かせない存在となっている。.

Photo with Black Midi vía The Austin Chronicle.

そんなKaidiが、2023年2月、自身のバンドを率いて606 Club に出演した。ギターのジョーダン・テイト(Jordan Tait)、キーボードとシンセサイザーを操るジャマール・ウィルソン(Jamal Wilson)、ベースのクライン・セルワッダ(Klein Sserwadda)、ドラムのニコ・サゲス(Nico Saggese)とのクインテットで臨むステージだ。Kaidiは、テナーサックスと、アルト・クラリネットも得意とするリード奏者だが、このステージではヴォーカルやギターも披露し、マルチプレイヤーとして彼の多彩な才能を見ることができる。このバンドは一貫して質感を重視した流れで進んでいき、ギターとシンセ、KaidiのヴォーカルとコーラスではJordanも参加し、ゆったりとしたサウンドスケープを作り出す。そして後半のステージではゲストヴォーカルも参加し、メロディが強調された曲へと多彩な展開を見せていく。

“Kaidiは、テナーサックスと、アルト・クラリネットも得意とするリード奏者だが、このステージではヴォーカルやギターも披露し、マルチプレイヤーとして彼の多彩な才能を見ることができる。

Kaidiは、ヒップホップ、R&B、ジャズ、エレクトロニカ、アフロビートなど縦横無尽に様々なジャンルの音色を生み出すサックス奏者だが、とても緻密な構成で曲を創り出すアーティストでもある。このライブではそんな彼の個性や、今後の目指すべき志向も窺えた貴重なステージだった。今後間違いなくUKシーンを代表するアーティストの一人となる彼のリアルな音を感じることができて、Oh!Jazzの醍醐味をたっぷりと味わうことができた。

T会場となったロンドンの606 Clubは、フルート/サックス奏者のスティーブ・ルービー(Steve Rubie)が始めたクラブ。1976年から40年以上の歴史があるジャズクラブで、当初は30席ほどの小さな会場だったが、ミュージシャンたちが信頼を寄せるライブハウスとして定着し、以来100人以上の集客ができるまでのジャズクラブに成長した。地元のシーンをサポートするために、王立音楽院とパートナーシップを組み、ミュージシャンのブッキングやプロモーションを積極的に行っている。Steve自らも、Samaraというラテンジャズ・バンドを率いて活動中だ、歴史的なUKのベテランから、Kaidiのような先鋭までが出演する606 Clubのラインアップがこれからも楽しみだ。

—Hiroko Otsuka is a music journalist, DJ and producer.

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